膝関節伸展制限が改善すると何で良いの?
先日、セミナーの受講生から下記の質問を受けました。
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変形性膝関節症の方を担当するときに、可動域制限に悩むことがあります。日常生活で考えると、屈曲制限との関係は分かりやすいのですが、伸展制限がどのように影響するかを教えて頂けますでしょうか。
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確かに今回の伸展制限を改善することの重要性はイメージしにくいかもしれませんね。
しかし変形性膝関節症のように歩行時痛を有する場合、特に伸展制限の改善は重要になります。
では、なぜ、伸展制限の改善が重要なのでしょうか?
そう質問されて、答えられないセラピストも多いかもしれません。
その回答として、まずは下記の映像を御覧ください。
膝関節の可動域・柔軟性の改善を考える場合、伸展制限の改善が最も重要であるといっても過言ではないんです。
臨床においても、伸展制限が明らかに改善すれば、大半の症例はその場で痛みが軽減します。
ただし、これは、「治る」こととは解釈が異なります。
伸展制限が改善すると、関節の動かし方や歩きやすさが大きく変化するため、痛みを発していた組織への負荷が減り、痛みが軽減すると解釈すると良いでしょう。
加えて言うと、伸展制限を改善すると「膝が軽くなりました」「力が入りやすくなりました」と患者から言われることも多いと思います。
この理由として、膝関節の機能が改善することが関係していると私は考えています。
逆に言えば、伸展制限を呈する状態では膝関節は本来の機能が十分に発揮できていないと言うことができます。
私の臨床経験から述べると、実際に膝関節の伸展制限を長期間呈していると痛みや変形(骨棘、軟骨変性や摩耗)が生じやすいと感じていますし、そのように述べている臨床家も少なくありません。
では、実際に膝関節伸展制限を改善するためにはどうしたらよいのでしょうか?
膝関節伸展制限があるからと言って、ただ曲げ伸ばしだけをするというのは、臨床家としては全く足りません。
痛みと同様に、硬さに対しても第3水準の評価を行うことで、狙いをもって伸展制限を改善することが重要だと思います。
膝関節の伸展制限に関与する組織としては、主に「膝蓋下脂肪体」、「表層組織(皮膚や筋膜)」、「膝蓋骨上方組織」、「半膜様筋」、「大腿二頭筋」、「後外側支持機構」、「膝窩の脂肪体」などが挙げられます(図)。
大切なこととして、膝関節伸展制限を生じさせる組織には何があるのかを知った上で実際に患者を診ることで答えに行きつきやすくなります。
そして、若い療法士でも、これらの組織への評価と治療方法を知っていれば、多くの伸展制限が改善しやすくなるはずです。
また、これらの組織について網羅してしまえば、あとは稀な症例の評価と治療を身に付けていくことで、セラピストとしての技術をさらに向上させていくことができるでしょう。

伸展制限の改善方法は下記の本に詳しく記載しています。興味のある方はぜひ御覧ください。
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いつも最後までご覧いただきありがとうございます。
推薦セミナー
【松本正知先生】松本先生はこう考える!! 四辺形間隙(QLS)症候群、肩甲上神経絞扼障害、胸郭出口症候群に対する評価と運動療法
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① 四辺形間隙(QLS)、肩甲上神経周辺の肩甲骨、胸郭出口の解剖学的な特徴を理解する
② QLS症候群、肩甲上神経絞扼障害・症候群(SNES)、胸郭出口症候群(TOS)の概要を理解する
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④ 上記3疾患に対する運動療法の考え方を理解する
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QLS症候群、SNES、TOSは腕神経叢のそれぞれに関わる神経の絞扼性神経障害であり、共通の症状として肩の外側から後方の痛みや放散痛、筋力低下に伴う挙上動作の困難、感覚障害などが上げられます。これらの疾患に対する基本的な運動療法の考え方は、同じと思います。末梢神経へのアプローチだけでなく、その周辺のfascia、肩甲上腕関節や肩甲骨の機能の回復、全身的な(特に股関節より近位)柔軟性や筋力を改善する必要があります。ただそれだけでは、不足していると考えます。
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【小野志操先生】曖昧に触るのはもうやめる!膝関節痛を改善するために必要な触診技術と治療の実際
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概要
多くのセラピストと対話する中で、私が感じることは、皆さん本当によく勉強されているということです。若い先生であっても、かなり詳細に病態をご存知の方が少なくありません。
一方で、とても詳細に病態を知っているにも関わらず、その知識が臨床の技術に反映されていないことで、「なかなか患者さんが良くならない」と悩まれている方が多いのも事実です。
今回のセミナーでは膝関節痛が発生する要因について、神経と半月板そして関節包をテーマに解説していきたいと思います。局所に対するアプローチは大切ですが、そもそもなぜ局所に組織の変性が発生しているのかについても解説したいと考えています。
その上で、実際の治療場面もご覧いただき、触ることの重要性を改めて感じていただければと思います。
臨床でよく遭遇する膝関節疾患ですが、「新たな診方が出来そうだ!」そんな風に感じていただける時間にしたいと思います。
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【中野ジェームズ修一先生】すごい股関節 柔らかさ・なめらかさ・動かしやすさをつくる 〜人間は股関節から老いていく〜
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◆開催日:2025年11月8日(土) 17:00–20:00
概要
股関節の重要性は臨床現場でも広く認識されていますが、その解剖学的・運動学的特性が全身の運動連鎖においてどのような役割を担っているのか、またその機能障害が上位・下位関節に与える影響について体系的に理解することは、専門家としての判断力を高めるうえで極めて重要です。
本講座では、講師がこれまで現場で実践してきた指導経験と、専門誌・書籍での執筆活動をもとに、「なぜ股関節が機能的中枢として重要なのか」を、豊富な症例と理論的背景を交えて分かりやすく解説します。
さらに、
- 可動性・安定性の評価と再構築のステップ
- 体幹・骨盤帯との協調性を高める介入戦略
- 姿勢制御と動的バランスへの波及効果
といった視点から、股関節の機能回復プロセスを段階的に整理し、実際の運動療法に展開するための具体的アプローチをご紹介します。
また、全身の荷重分散と動作制御を統合的に促すことができるトレーニングマシン「ENCOMPASS」を活用した、臨床現場で即応用可能なトレーニングバリエーションも実演形式でお伝えします。
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【中村尚人先生】臨床における脚長差とバランス機能を考える〜臨床での捉え方と実践のための考え〜
◆講 師:中村尚人先生
◆開催日:2025年11月15日(土) 17:30–20:30
概要
脚長差には「機能性脚長差」と「構築性脚長差」があります。評価方法として立位での骨盤の触診、伏臥位での測定、直接足底板での前屈テスト、歩行評価があります。また機能性の見極めとして、全身のアライメントチェエク、さらには骨格特性の確認など多様な項目が必要です。
つまり、脚長差はTMDやアリスサインなどの項目の結果だけでは判断できない複雑なものです。様々な代償を起こしていますので、臨床的な経験と網羅的な全身評価がないと間違う可能性が高くなります。
今回は、実際の評価現場を見ていただきその奥深さと、ある意味での難しさを理解していただければと思います。脚長差という現象自体も、やはり前進性の評価の中で初めて判断できるという事実を確認してもらえたらと思います。
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【岸田敏嗣先生】臨床で使える触診と断面解剖の知識~機能解剖学的視点からの実践アプローチ
◆講 師:岸田敏嗣先生
◆開催日:2025年11月24日(月・祝) 9:00–12:00
概要
講演内容
●臨床での評価・治療に展開できる超音波解剖と触診
今まで学んだ解剖学は基本的には教科書を中心とした二次元の知識かと思います。その二次元解剖の知識をベースに各自が頭の中で立体的に構築したものを三次元解剖としていることかと思います。中にはご献体にて実際に学ばれた方もおられるでしょうが、また、それも目の前の症例とは一致しません。そんな状況で触診をして評価・治療に展開していく必要があります。エコーを活用した触診も併せて、私が行っている方法とその考え方をご呈示して、その方法と限界をみなさんと共に考えていきたいと思います。
【セミナー内容】
●触診の基礎
触診を行うに当たり、私なりの工夫や注意点などのポイントを呈示します。
●評価・治療への展開
触診の必要性と、できることで可能となる評価・治療への展開について、具体的なものをピックアップして呈示し、今後の勉強の方向性を確認します。
【到達目標】
・三次元解剖学の考え方、学び方を理解する。
・触診の基礎、その重要性と練習の方法を理解する。
・触診の評価。治療への展開を理解する。
・エコー画像の解釈を理解する。
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【二村涼先生】”なぜ治らない?”から抜け出す!肘関節の痛みを深掘りする~触診・評価・治療までを網羅する~
◆講 師:二村涼先生
◆開催日:2025年11月29日(土) 17:30–19:30
概要
肘関節(腕尺関節)は一軸性の関節であり、多軸関節である肩関節などと比較して簡単なイメージを持たれやすいですが、実際には疼痛の原因が不明確なまま漫然と治療されているケースも少なくないです。その原因としては、「内側・外側上顆炎」「靭帯損傷」といった診断名だけでは解決しない痛みや、鑑別が必要な病態が多いことが考えられ、これらに対しては詳細な評価とエコーを用いた組織や動態の可視化が重要だと感じています。
本講演では、肘関節内側と外側の痛みに対して行なっている詳細な理学所見の取り方や、エコーを用いた評価から治療までの一貫した内容を臨床に即した形で紹介します。解剖学・機能解剖学に基づいた評価や治療について自験例を交えてお伝えしますので、症例のイメージもしやすく明日からの臨床に活かせる内容だと思います。
【セミナー内容】
・肘関節の解剖とエコー解剖
・肘関節の痛みに対する評価のポイント(触診、エコー、末梢神経)
・内側部痛に対する評価とアプローチ(症例提示)
・外側部痛に対する評価とアプローチ(症例提示)
【到達目標】
・肘関節の痛みに関与する病態を理解する
・肘関節の痛みに対する評価・鑑別方法とアプローチまでの一貫した流れを学ぶ
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【工藤慎太郎先生】1単位で診る!外来痛みシリーズ 運動器疾患の痛みの「なぜ?」がわかる~頚部痛・腰痛 座学編~
◆講 師:工藤慎太郎先生
◆開催日:2025年12月7日(日)9:00~11:00
概要
頚部や腰部の疼痛に対する理学療法を考える上で大事なことは、疼痛発生部位を明確にするとともに、脊柱機能の改善であろう。中でも、四肢の運動に対して、如何に脊柱が細やかに動き、安定性と可動性を調整しているかを考える必要がある。その考えに基づいて、脊柱の可動性をどう評価するか? 発痛源をどう評価するか?を中心にお話しする。
特に
・上肢、下肢の放散痛を有する症例で何を考える?
・長時間座位で痛くなる症例で何を考える?
・脊柱を安定させるには?
応募はこちらから
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【齊藤正佳先生】あぐら・開排制限はこう解決する! 股関節の可動域を末梢神経から考える
◆講 師:齊藤正佳先生
◆開催日:2025年12月13日(土)17:30~20:30
概要
あぐらや股関節の開排動作は、股関節屈曲・外転・外旋の複合運動で構成され、日常生活、スポーツで高頻度に要求される動作です。日常診療では、これらの動作が困難な患者を多く経験しますが、その制限因子の一つが痛みです。しばしば、股関節の形態的異常であるFAIや寛骨臼形成不全などが背景にあります。そのため、適切な介入をするためには、まず、股関節内または股関節外のどちらが痛いかを身体所見と画像所見から病態を考えることが極めて重要です。関節内の痛みを疑った場合は、医師による関節内注射の反応を評価することで、病態を明確にする一助となります。関節内の痛みに対する徒手療法・運動療法では、関節内への機械的ストレスを減少させるために、関節包筋の収縮を用いて関節包内の運動の再獲得を図ります。
ただし、例え関節内の病態を疑わせる画像所見があったとしても、注射に反応しないこともあります。さらに、関節内に病態がなくても痛みを訴えることもあります。これらの場合、何が痛いのでしょうか?また、関節内に痛みがあったとしても徒手・運動療法で痛みが改善されることもあります。我々セラピストは、何を治しているのでしょうか?私は、この痛みの一つに末梢神経が関与し、末梢神経の滑走障害などが、あぐら・開排時の痛みや可動域制限を生じさせる可能性があると考えています。
本講演では、
①股関節内または股関節外の痛みについて、解剖学的な知識を知ること
②あぐら・開排動作の機能解剖学的な身体所見の取り方を理解すること
③股関節の機能解剖学に基づいた運動療法の進め方を理解すること
を目標に、実際の患者を交えながら紹介します。
応募はこちらから
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【吉井太希先生】症状改善から再発予防まで ~頚部障害に対する触診・評価・治療でつなぐ臨床実践~
◆講 師:吉井太希先生
◆開催日:2025年12月20日(土)17:30~20:30
概要
頚部のアプローチに不安や苦手意識はありませんか?
臨床現場では頭頚部痛や上肢症状を認める症例が非常に多く、これらの症例に対しては頚部を評価して治療する必要があります。
しかし、この評価と治療を行う際には、”触診技術”が問われます。
例えば、上角部痛を呈する症例に対して触診を行い、得られた情報が「肩甲挙筋が硬い」と「肩甲挙筋と後斜角筋間が硬くて筋間に指が入らない」では、どちらが有益でしょうか?
後者においては、末梢神経の知識があると筋間を走行している肩甲背神経を疑うことが可能であり、同神経に対する評価を展開することができます。
その結果、統合と解釈をして肩甲背神経が疼痛に関与していると判断した場合は、肩甲挙筋と後斜角筋間を滑走させるための局所的な徒手操作を実施します。
さらに、これらの筋が再び過緊張位を呈して硬くならないために、胸郭機能や脊椎アライメントの改善を実施します。
以上のように、頚部障害の改善には機能解剖学を踏まえて触診を行い、評価・治療に繋げるプロセスが非常に重要です。
本講演では、以下の①〜③を中心に解説します。
①頚部痛に対する評価と治療
②頚部由来の上肢症状に対する評価と治療
③「①、②」を診るうえで必要な軟部組織の機能解剖と触診のポイント
受講後には頚部の不安や苦手意識を克服し、自信を持って臨床的なアプローチができることを目標とします。
先生方の頚部に対する臨床判断力の構築に貢献できれば幸いです。
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※新型コロナウイルスの影響により、現在会場セミナーは中止しております。
Zoomセミナーは詳細が決まり次第、掲載していきます。
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