シーズン後半に離脱したプロ野球選手の病態
日本シリーズも終わり、日本のプロ野球も閉幕しました。
先日、シーズン後半に離脱したプロ野球選手がいらっしゃいました。
症状聞くと、下腿三頭筋の痛みがあり、シーズン後半は離脱せざるをえなくなったようです。
痛みはじめのきっかけは特になかったそうです。
どんな動作で痛みが残っているのかを聞くと、「バッティングや、 守備は思い切りできるんです。でも走るのが痛い。そして、引きちぎれそうで怖いんです。」
しかもバッティングより、歩行のほうが強さがあると言います。
ここまでの話を聞いて、あなたはどんな病態を思い浮かべますか。
加えて、なぜバッティングや守備のように下腿三頭筋に強い負荷がかかる運動でそれほど痛くないのに、走行や歩行で痛みや不安感が出ると考えますか。
ここまでの話を聞いて、私は2つの病態を想像しました。
1つ目は筋膜です。
もう1つは、腓腹筋の近位部での滑走障害です。
私はまず初めに腓腹筋の伸張テストを行いました。
すると、これによりいつも感じるような痛みが出たので、これが第2水準の評価として使えることがわかりました。
そして、まず筋膜を施術しました。
この施術の後、伸張テストを行うと、症状は変わりませんでした。
このあと、腓腹筋の近位部を滑走操作行いました。
すると伸張テストの症状がほとんどなくなったんです。
ここまでの第3水準の評価までのプロセスができたことで、
「バッティングや守備のように下腿三頭筋に強い負荷がかかる運動でそれほど痛くないのに、走行や歩行で痛みや不安感が出る」ということの謎が溶けました。
つまり、
腓腹筋の近位部の滑走性の低下を起点に、その遠位に局所的伸張負荷が生じていたんです。
このことを理解するために下図を見てください。
通常、立脚後半相には膝関節伸展・足関節背屈が生じ、このときに腓腹筋には最も伸張負荷が生じることになります。
正常な腓腹筋では、伸張力は筋全体で分散することができます(下図a)。
しかし、今回の症例のように腓腹筋の近位部に滑走性の低下が生じることで、その遠位には強い局所的伸張負荷が生じるようになります(下図b)。
実は、筋はこうした局所的な伸張に非常に弱いんです。
そのため走行や歩行で痛みや不安感が出ていたと解釈しています。
一方で、バッティングや守備では強い収縮力が生じても、これらの動作では膝関節は屈曲位です。そのため、伸張位で使う機会が少ないため、それほど痛みを生じなかったと考えられます。
以上のことから、今回の症例ではバッティングや守備のように下腿三頭筋に強い負荷がかかる運動でそれほど痛くないのに、走行や歩行で痛みや不安感が出ていたというわけです。
これで全てが解決するかどうかはまだ分かりませんが、しかし、病態の多くを占めるのは、おそらく腓腹筋近位部の滑走性の低下ではないかと思われました。
このように病態が分かると、患者が訴える症状の意味がわかってきます。
皆さんも患者の訴えを真摯に聞いて評価や治療を行ってみてください。
推薦セミナー
LIVEセミナー/ZOOM【赤羽根良和先生】脊柱・骨盤帯の可動性をこう改善する
◆講 師:赤羽根良和先生
◆開催日:2024年12月21日(土) 17:30~20:30
概要
運動器診療において、痛みの改善は最も重要な課題です。近年、超音波診断技術や超音波ガイド下注射の普及により、痛みの原因となる組織をより正確に特定できるようになりました。それに伴い、セラピストにも痛みの原因となる組織の滑走性を改善する高度な技術が求められています。
しかし、局所の滑走性を改善しても、効果が持続しない場合もあります。そのような状況に直面したとき、どのように治療戦略を見直すべきでしょうか?また、どの関節に注目すべきでしょうか?
私はこれまでの講演で、「ICA拘縮理論」を提唱してきました。この理論の「A」はAdjacentを意味し、隣接関節を指します。隣接関節に拘縮が生じると、その周辺組織に負担がかかるという考え方です。具体例としては、Hip-Spine SyndromeやKnee-Spine Syndromeが挙げられます。
脊柱や骨盤帯の可動性が低下すると、隣接する関節にも負担がかかります。今回の講演では、脊柱・骨盤帯の関節運動の基礎知識を確認しながら、その関節の評価方法、アプローチ方法について紹介します。このアプローチを身につけることで、これまで改善できなかった痛みの解消につながる新たな糸口が見つかるでしょう。
12月21日のライブセミナーでは、この理論を臨床的な視点から詳しく解説し、12月22日の実技セッションではその技術を実際に習得いただけます。痛みを根本から解消するための新しい治療戦略を学ぶ絶好の機会です。ぜひご参加ください。
実技セミナーはこちら
【赤羽根良和先生】脊柱・骨盤帯の可動性をこう改善する(実技セミナー)
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https://seminar.ugoitalab.com/event/20241221z/
LIVEセミナー/ZOOM【小野志操先生】肩関節における臨床症状とエビデンスの接点〜痛みを改善するために小野先生はこう考えてこう治療する〜
◆講 師:小野志操先生
◆開催日:2025年1月12日(日) 10:00~13:00
概要
肩関節に対する理学療法を行う際に苦慮する症状の主たるものとして、①可動域制限、②肩前方部痛、③肩上方部痛、等が挙げられると思います。
これら症状の中でも痛みを改善することが難しいと感じている方が多いのではないでしょうか。
ほとんどの症例で、関節可動域が改善していく中で痛みが改善していくケースが多い訳ですが、「関節可動域改善」=「疼痛軽減」と考えてしまっているのではないでしょうか?
本質的なことを言えば、『関節可動域制限の原因となっている軟部組織』と『運動時痛の原因となっている軟部組織』が同じであれば、『その軟部組織の性状が元あった状態に近づくような操作を加えていくことで、関節可動域も疼痛も改善する』ということになります。つまり「痛み」に対する理学療法を考える際は、「どの組織に、どのような刺激が加わると痛みが出現するのか」を考えなければならない訳です。
「痛み」という症状に対して療法士でできることとは?肩関節治療を通して考えていきましょう。
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LIVEセミナー/ZOOM【古泉貴章先生】顎関節から紐解く姿勢の診方と隣接関節の関係について〜姿勢・動作改善の新たな展望〜
◆講 師:古泉貴章先生
◆開催日:2025年1月19日(日) 9:00~12:00
概要
顎関節(temporomandibular joint : TMJ)は側頭骨と下顎骨で構成されている関節です。顎関節の機能は咀嚼・嚥下・発声・認知・身体の平衡機能、頸部との運動学的関係性など、私達の臨床場面でも重要な機能を持つ関節です。顎関節の代表的な疾患に「顎関節症(temporomandibular disorders : 以下TMD)」があり、日本では推定1,900万人(15.2%)に存在し、実は身近な疾患の1つとして認識する必要性があります(厚生労働省平成28年歯科疾患実態調査)。本講演でははじめての方でも分かりやすいように、顎関節の基礎的な解剖・運動学、臨床に使える評価方法などをお話しさせていただければと思います。
【セミナー内容】
顎関節の概要
顎関節の基礎(解剖・運動学)
顎関節の評価学
顎関節の治療学(症例提示)
【到達目標】
・顎関節の基礎を理解する。
・顎関節の簡単な評価ができ、臨床で活用できるようになる。
【参考資料】
・運動のつながりから導く姿勢と歩行の理学療法
→https://www.bunkodo.co.jp/book/00DC1SY0XI.html
・症例動画から学ぶ臨床姿勢分析〜姿勢・運動連鎖・形態の評価法
→https://human-press.jp/book_35.html
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https://seminar.ugoitalab.com/event/20250119z/
【赤羽根良和先生】レントゲン読影から観た運動療法の治療戦略~骨折画像からいかに軟部組織の損傷を捉えるか~
◆講 師:赤羽根良和先生
◆開催日:2025年1月25日(土) 17:30~20:30
概要
みなさんは、股関節疾患のリハビリテーションにおいて、レントゲン読影を活用していますか。
多くのセラピストがレントゲンを見て骨折部位を確認しますが、レントゲンからの情報はそれだけではありません。
私が入職後に林典雄先生(運動器機能解剖学研究所)から「一日3時間の勉強」と「正常のレントゲンを2万枚読影する」という課題を与えられ、この課題に取り組むことで、私の臨床の見方は大きく変わりました。毎日のようにレントゲンと向き合い、最初は理解できなかった画像も、1万枚を超えた頃には、その周囲の筋肉や軟部組織までもが想像できるようになってきたのです。特に印象深いのは、骨折の状態からなぜ筋攣縮が生じているのかを予測できるようになったことです。それまでは患者さんの痛みの本当の原因がわからず、治療に手探り状態でしたが、レントゲン読影のスキルを高めることで、なぜ筋肉が緊張しているのか、そしてそれをどう治療すべきかが次第に明確になっていきました。
今回のセミナーでは、私が得たこの読影スキルとその応用方法を皆さんにお伝えします。
レントゲンを単なる診断ツールとして利用するのではなく、股関節リハビリに役立つ「運動療法のヒント」として活用する方法を学んでみませんか。なぜ筋攣縮が生じるのか、その背後にあるメカニズムについて、レントゲンを通して理解することで、患者さんへのアプローチがより精密で効果的になるはずです。
この講演を通じて、レントゲンの見方が変わり、臨床現場での治療が一段と進化することを一緒に学んでいきましょう。
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https://seminar.ugoitalab.com/event/20250125z/
【河重俊一郎先生】脊椎圧迫骨折に対する治療戦略~基礎知識から介入の実際まで~
◆講 師:河重俊一郎先生
◆開催日:2025年2月2日 (日) 9:00 – 12:00
概要
椎体骨折(脊椎圧迫骨折)は最も頻度の高い骨粗鬆症性骨折であり、我が国では70歳代の25%、80歳以上の半数近い人数が椎体骨折を有するとされています。
過去、椎体骨折の対応は他の骨折同様、安静臥床が一般的でしたが、近年では早期離床、早期活動がセオリーとなり、急性期からのリハビリテーションの重要性が叫ばれています。また、脊椎圧迫骨折は連鎖性に骨折を起こすことが知られており、骨折治癒後の身体機能向上が欠かせません。
本セミナーでは、そんな椎体骨折の基礎的な知識を学ぶとともに、急性期から骨癒合後の症候、手術に対してまで、脊椎圧迫骨折に対する介入を総合的に解説します。
セミナーの狙い
・椎体骨折への介入に必要な知識を理解する
・椎体骨折を有する対象者への介入を学ぶ
・椎体骨折に関連する高齢者の身体機能について理解し、介入できるようになる
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https://seminar.ugoitalab.com/event/20250202z/
【赤羽根良和先生】変形性股関節に対する機能解剖からみた治療戦略~筋肉をいかに柔軟にするか~
◆講 師:赤羽根良和先生
◆開催日:2025年2月8日 (土) 17:30 – 20:30
概要
【セミナー概要】
変形性股関節症(股OA)は、日常生活に大きな影響を与える退行性疾患であり、股関節の痛みや可動域制限、歩行困難を引き起こします。本セミナーでは、股関節障害に関連する腰椎や仙腸関節の役割も踏まえ、包括的な治療戦略を解説します。
特に、Femoroacetabular impingement(FAI)の分類や、股関節のPincer型・Cam型に対するアプローチ、そして寛骨臼の前捻・後捻に関する画像診断の重要性について詳しく解説します。
さらに、変形性股関節症の病期分類を通して、患者の状態に応じた適切な運動療法やリハビリテーションの選択、レントゲン所見から導き出される治療指針を解説します。
また、”人工股関節置換術(THA)”における術後の合併症管理やリハビリテーション方法、術後の歩行改善に焦点を当てた実践的な内容を紹介します。
【セミナーで学べる内容】
- 変形性股関節症とは?
股OAの病理や症状、進行に伴う関節の変化を深く理解する。 - 股関節障害の考え方
腰椎疾患や仙腸関節障害と股関節障害との関係を明確にし、包括的な治療アプローチを学ぶ。 - Femoroacetabular impingement(FAI)とその分類
FAIの分類(Pincer型、Cam型)を詳しく解説し、それぞれに応じた治療アプローチを学ぶ。 - 変形性股関節症の病期分類とレントゲン所見
X線画像を用いた病期分類の理解を深め、治療方針の決定に役立つ知識を解説する。 - 運動療法とTHA術後のリハビリテーション
変形性股関節症に対する運動療法の有効性と、人工股関節置換術後のリハビリテーションにおける重要ポイントを学ぶ。
応募はこちらから
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https://seminar.ugoitalab.com/event/20250208z/
【畠中泰彦先生】美味しいとこだけ、分かりやすく臨床に活かすための歩行運動学
~トレンデレンブルグ・デュシェンヌ歩行を徹底攻略する~
◆講 師:畠中泰彦先生
◆開催日:2025年2月16日 (日) 9:00 – 12:00
概要
【セミナー概要】
バイオメカニクス、力学というと何か途方もなく難しい学問のイメージがありますが、臨床で必要な知識のレベルはそう高くはありません。むしろクリニカルリーズニングのためのツールと考えると、「1を学んで10を知る」すなわち応用が利くようになります。
今回はトレンデレンブルグ・デュシェンヌ歩行の運動学を手始めに治療やリスク管理に使えるコンセプトを解説します。トレンデレンブルグと言うと変形性股関節症を想起する方が多いかと思いますが、メカニズムが解れば脳卒中片麻痺やスポーツ疾患にも応用できます。
難解な数式は使わず、分かりやすさ重視で観察、分析のポイントを解説します。
講義の途中と最後で、臨床の疑問にもなるべく多くお答えします。
応募はこちらから
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https://seminar.ugoitalab.com/event/20250216z/
【赤羽根良和先生】股関節疾患に多い前面部痛に対する機能解剖からみた治療戦略
~前方の組織をいかに柔軟にするか~
◆講 師:赤羽根良和先生
◆開催日:2025年2月22日 (土) 17:30 – 20:30
概要
股関節前面部の痛みは、臨床現場において多く経験する訴えであり、その原因は多岐にわたります。歩行時の痛みや動作時の不快感が日常生活の制限となることが多く、早期の評価と適切な治療が必要です。しかし、股関節の痛みは他部位の問題と複雑に関連しているため、正確な評価と、効果的な治療計画を立てるのが難しいと思います。
本セミナーでは、股関節前面部痛の理解を深め、痛みの原因となる因子を的確に捉えることで、効果的な治療に繋げることができるように学んでいきます。
特に、骨盤の傾斜角度や股関節と腰椎の可動域の関係に着目し、患者の痛みの根本的な原因を特定するための評価技術を解説します。また、寛骨臼の前捻・後捻の画像所見を活用し、痛みの進行度や疾患の特徴を診断に活かす方法についても具体的に説明します。
さらに、股関節と腰椎の連動性や神経支配の影響に基づく治療アプローチも解説します。
股関節痛の背後には、大腿神経や閉鎖神経などの神経支配が関わっており、痛みの部位やタイプに応じて異なる治療法が必要です。
本セミナーでは、大腿神経の易障害部位や神経関連の痛みを評価するための技術を習得し、それに基づく運動療法を紹介します。
また、股関節前面のインピンジメントや、大転子周辺の滑液包に関連する痛みの発生メカニズムについても解説し、それに対する効果的なアプローチ方法を学びます。これにより、歩行時や動作時の痛みを軽減し、可動域の改善を目指した具体的な治療方法を解説します。
【セミナーで学べる内容】
・股関節前面部痛の病態と評価方法
股関節前面部痛とは何か?痛みの原因を多角的に検討し、原因組織を特定するための評価方法を解説します。
骨盤の傾斜角度が痛みの発症に与える影響について学び、腰椎と股関節の連動を考慮した評価技術を紹介します。
・画像所見を用いた股関節前面部痛の推論技術
寛骨臼の前捻・後捻に関する画像診断のポイントを押さえ、痛みの進行度を客観的に評価するための方法を解説します。
X線やMRIを活用し、股関節の状態を的確に診断するための技術を解説します。
・股関節と神経支配の関連性とその治療アプローチ
大腿神経、閉鎖神経をはじめとする神経の支配領域に基づく痛みの評価を学び、痛みの部位に応じた治療アプローチを解説します。
・股関節拘縮の運動療法 – 拘縮解消に向けた実践的アプローチ
“股関節屈筋群(大腿直筋、腸腰筋、Iliocapsulalis)”の機能や解剖学的背景を踏まえ、拘縮の解消を目指した運動療法を紹介します。
大転子周辺の滑液包に関連する痛みを軽減するための具体的なアプローチを学び、患者の症状改善に直結する技術を紹介します。
・股関節前面インピンジメントへの対策と予防
股関節前面でのインピンジメントを特定し、痛みの発生メカニズムを理解します。歩行や日常動作時の痛みを緩和するための治療戦略を解説します。
応募はこちらから
↓ ↓ ↓
https://seminar.ugoitalab.com/event/20250222z/
その他の園部企画の講演・セミナー
※新型コロナウイルスの影響により、現在会場セミナーは中止しております。
Zoomセミナーは詳細が決まり次第、掲載していきます。
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