腹内側系と背外側系の神経路について
先日、あの山本伸一先生を臨床家のための運動器研究会にお呼びしました。
実力、人柄も含め、最高の臨床家である事はもちろん、現在、作業療法士協会の副会長であり、将来、作業療法業界を牽引するような方です。
講演終了後、この業界の未来についていろいろなことを話させて頂きました。
実りのある話がたくさんできました。
そのあと、山本先生から「一緒に写真を撮りましょう!」と言われ、とてもうれしく思いました。
さて、今回は神経路の話です。
私は脳卒中などの中枢神経疾患をみるときも、力学が基盤になると考えています。
しかし、神経路の知識も絶対に必要です。
こうしたことを踏まえ、今回の記事を読んで頂けると幸甚です。
かならず、知っててよかったと思いますよ(^_^)
「腹内側系」と「背外側系」の神経路の概念は、運動機能をみる我々療法士にとって臨床で欠かせません。
この概念を理解しておくことは、若い療法士にとってとても重要なので、私なりにどの記事よりも最も簡潔にまとめておきます。
まず・・・
なぜ「腹内側系」・「背外側系」と言われるかというと、脳から末梢への運動伝導路が、主に背髄の腹側および内側を通る経路と、背側および外側を通る経路に分けることができるからです。
「腹内側系」の神経路は、主に体幹や上下肢の近位筋といった身体の中心部分を支配しています。
「背外側系」の神経路は、主に手足の筋を支配し、特に巧緻性の機能に関与しています。
人間の運動遂行にはこの両方の神経機構が重要なのは言うまでもありません。
ただし、臨床的には「腹内側系」の神経路があまりにも重要なので、この記事では「腹内側系」の神経路について説明しておきます。
「腹内側系」は体幹を中心に身体の近位部を支配しているため、姿勢制御やバランスを担う経路です!
つまり、この経路が障害されると・・・、
姿勢を保持するための筋緊張が崩れ、
体幹アライメントは変位し、
バランスは当然悪くなるわけです。
さらに手足を動かすときの土台が安定しないため、手足にうまく力を伝えることができなくなってしまいます。
この「腹内側系」の神経路で知っておきたい概念があります。
それは、
この神経路が、大脳皮質ではなく、脳幹を主体に非随意的にコントロールされているということです。
つまり、姿勢制御やバランス保持の機能は、随意的にコントロールするよりも、半自動的な非随意運動によってコントロールされているのです。
しかも大脳皮質よりも脳幹を主体に始まる経路なので、より早く駆動され、素早い反応で姿勢制御機構は機能します。
わずかな外乱に対する身体の乱れも瞬時に反応して、姿勢やバランスを保持できるのはこのためです。
だから・・・
良好な姿勢制御機構を促すために、無意識下で良好な反応ができる運動を行わせることが重要になることが分かります。
この真意はあまりに深いです。
素晴らしい臨床家は、こうした反応を患者ごとにいつも探っているといえます。
さらに、「腹内側系」の神経路は、動いている状況に応じて、先回りして姿勢制御を行う機能があり、これにより安定した動作が遂行できます。
人間の機能ってすごいと思いませんか!!
高齢者や脳血管障害の患者は特に「腹内側系」の神経路が障害されます。
だから・・・、
姿勢筋緊張の異常、体幹の変位、異常運動パターンが起こりやすくなるわけです。
さらに加えると・・・
体幹を中心に身体の近位部は、空間認知能力が手足など遠位部と比較すると非常に弱いです。
このため、「腹内側系」の神経路を賦活することが、いかに重要であるかが分かります。
今回の話はあまりにも奥が深く、体幹機能を考える上でとても重要です。
また身体の反応として、臨床では信じられないようないろいろな反応がありますが・・・、
この神経は、絶対いろいろな場面で関与しています。
私自身も全て理解しているわけでは無いですし、また皆さんもすぐに理解できるものでは無いと思います。
今回、説明した記事を頭に入れて、すこしだけ意識しながら、臨床と向き合ってみてください。
知っているか、知らないかは大きな違いになるからです。
追伸
下記はプロバレリーナの奥田花純さんです。
バレリーナはみんな品格と美しさがあります。ちょっと緊張します(^_^;)、
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LIVEセミナー/ZOOM【財前知典先生】イチから始める歩行分析 〜財前知典が考える歩行の診方と変化の出し方
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歩行分析で大切な事は正常歩行との比較に終わらないことです。
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LIVEセミナー/ZOOM【赤羽根良和先生】赤羽根先生はFasciaが由来する痛みと痺れをこう改善する-上肢編-
◆講 師:赤羽根良和先生
◆開催日:2023年10月14日(土) 17:30~20:30
概要
<セミナー内容>
近年、運動器の治療においてFascia(筋膜)と神経の重要性がますます高まっています。
本セミナーでは、その関係性に焦点を当てながら、私の考えるFasciaと神経の評価とアプローチについてご紹介いたします!
神経の滑走障害が疼痛の原因となるケースは多く、臨床経験からもその重要性が浮き彫りになっています。
そこで、このセミナーでは、上肢Fasciaと神経周膜・血管周囲の滑走性について、具体的な事例とともにご説明します。
さらに、解剖学的な内容を視覚的に理解するために図を用いて説明し、実際の運動療法との関連性にも触れます。
このセミナーを通じて、Fasciaと神経の滑走障害が疼痛に与える影響について新たな気づきを得ることができます。
そして、その知識を武器に、より多様な治療選択肢を手に入れることでしょう。
これからは、疼痛の評価において神経の滑走障害を見落とすことのないよう、より高度な理学療法を展開していくことが可能になります。
これまでのアプローチにとらわれず、Fascia・神経の滑走障害を含めた包括的な治療を取り入れてみませんか?
刻々と進化する医療の世界において、新たな知識を身につけることは必須です。
是非、本セミナーで理学療法士としてのスキルを高めてみてください。
また11月にも、下肢編を行います。
【赤羽根良和先生】赤羽根先生はFasciaが由来する痛みと痺れをこう改善する-下肢編-(LIVEセミナー/ZOOM)
【セミナーの到達目標】
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•上肢のFasciaと神経の評価と治療を学ぶことできる
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LIVEセミナー/ZOOM【豊田和典先生】整形外科疾患と跛行~症例を通して下肢関節機能障害の歩行への影響と運動療法を考える~
◆講 師:豊田和典先生
◆開催日:2023年10月22日(日) 10:00~13:00
概要
変形性疾患や外傷後に跛行を生じる例は多く、その原因は身体構造上の問題、疼痛の問題、神経の問題、筋の問題、血行の問題など様々である。
跛行は歩行エネルギーの非効率化や二次性疼痛発生、隣接関節等への負担増加などを引き起こすため、歩行能力向上のためには跛行の改善が必要である。
本研修では整形外科疾患の症例(主に術後の症例になります)を通して、跛行の特徴や観察すべきポイント、問題点の抽出とそれを改善するための運動療法を学んでいきたいと思います。
【セミナー内容】
1.跛行を引き起こす原因とその影響について
2.各整形外科疾患で生じることが多い跛行と観察すべきポイントについて
3.跛行を引き起こす原因とそれに対する運動療法について
【到達目標】
1.各整形外科疾患で生じる跛行の特徴を理解すること 2.跛行を引き起こす原因とそれに対する運動療法を理解すること
応募はこちらから
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https://seminar.ugoitalab.com/event/20231022z/
LIVEセミナー/ZOOM【中村尚人先生】比較解剖学の視点、アフォーダンス理論について
◆講 師:中村尚人先生
◆開催日:2023年10月29日(日) 10:00~13:00
概要
私たちの体は長い進化の中で形作られました。
医学教育の中で、解剖学を通して体の特徴を学びますが、なぜ今の形状になっているのかの意義について学ぶ機会はありません。
比較解剖学は、ヒトとそれ以外の動物との骨格などを比較することで、ヒトの特徴やその形状の意義を導き出してくれます。
アフォーダンス理論は1950年代に認知心理学者のギブソンによって提唱された概念で、環境などの外の刺激が人間の行動を決定しているという主客反転のユニークな視点を持っています。進化から考えると、今存在している生物は環境適応で選択されたものですから、環境の要因が主であるというのも頷けます。
【セミナー内容】
類人猿を中心とした人類との比較解剖学から、ヒトの機能や骨格的な特徴を見ていきます。アフォーダンスに関しては、社会の環境や自宅の環境が身体に及ぼす影響を見ていきたいと思います。
【到達目標】
・比較解剖学に基づいたヒトの機能の優先順位を理解する。
・ヒトとはどのような動物なのかを理解する。
・アフォーダンス理論から環境が身体に与える影響を理解する。
・患者さんの背景として環境を確認する必要性を理解する。
・問診として何を確認するかを学ぶ。
応募はこちらから
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https://seminar.ugoitalab.com/event/20231029z/
会員無料LIVEイベント/ZOOM【土屋元明先生】デイサービス・訪問リハビリの若手セラピストに伝えたい現場で活かす臨床思考と介入のクリニカルヒント
◆講 師:土屋元明先生
◆開催日:2023年11月4日(土) 19:00~20:30
概要
<セミナー内容>
デイサービスや訪問リハビリの現場で働くセラピストの悩みは、病院やクリニックで働くセラピストとは少し違います。
例えば…
・介護保険の現場は、対象者の情報をすぐに得ることが難しく、疾患も多岐に渡るため、どう介入して良いか悩む。
・認知機能や意欲の問題もあって、運動機会や頻度を増やすことができず介入方法に困っても、相談できる相手がいない。
・研修制度やそのシステム効率が悪く、効果的に学ぶことができない。
といった悩みが挙げられます。こうした悩みによって、自分が本当に成長できているか不安になっていませんか?
そして、「様々な手法で介入」していたはずなのに、いつの間にか「ルーチン化」になっていませんか?
ルーチン化することは大切ですし、効率も高まるのですが、それで本当に良いのでしょうか?
そこで今回、デイサービス・訪問リハビリの立ち上げから、現場指導までこなしている元明先輩から、こうした悩みを解決するためのクリニカルヒントについて講演をしていただきます。元明先輩がどういった思考過程でサービスを提供し、スタッフと働いているのかを知ったり、具体的にどう介入しているのかを知ったりすることで、悩みを解決するヒントを得て下さい。
〜元明先輩より〜
皆さんが抱えている悩みは、私も抱えていたり、現在も抱えている内容が多いと思います。
大切なのはこうした悩みに対して、他のセラピストはどうしているかを知り、自分ならどうするかを考えることだと思います。
だからこそ、今回の講演のテーマは「KPO」です!!
KPOとは、勝手にパクってオリジナルの略です。
デイサービスの立ち上げや訪問リハの立ち上げ依頼を受け、介護保険下のセラピスト指導を行ってきた私の考えを聞いて、良いと思ったものは勝手にパクってください。
そして、実践しながら自分のオリジナルにしてください。
皆様にお会いできること、楽しみにしております。
応募はこちらから
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https://seminar.ugoitalab.com/event/20231104e/
その他の園部企画の講演・セミナー
※新型コロナウイルスの影響により、現在会場セミナーは中止しております。
Zoomセミナーは詳細が決まり次第、掲載していきます。
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