術後・外傷後の足部の拘縮を改善する重要性

足部・足関節の術後・外傷後のリハビリにおいて、距腿関節や距骨下関節が着目される一方で、
それより遠位の足部の各関節にはあまり着目されません。
そこで今回は、外傷や術後に生じる足部の拘縮について考えてみましょう。
骨折や外傷後に足部の各関節に拘縮を生じることは多いです。
しかし、荷重が開始されると、強い変形を伴っていなければ、
特別な可動域運動を実施しなくても通常は元の可動域に近い状態に戻っていきます。
実際に、足関節の可動域エクササイズは頻繁に行いますが、
足部の可動域エクササイズを行うセラピストはそれほど多くありません。
例えば、舟状骨、中足骨、踵骨の骨折を有すると、一時的に足部は拘縮します。
しかし、足関節の可動域エクササイズはしても、
足部の可動域エクササイズをすることはそれほど多くないと思います。
また、足部の拘縮が問題になるケースは、
足関節、膝、股関節などと比較すると圧倒的に少ないと言えます。
つまり、変形を伴っていなければ、足部の拘縮は比較的起こりにくい、もしくは問題として表出しにくいと感じます。
*足部の可動域エクササイズが不要だと行っているわけでは有りません。あくまでも現状を述べています。
ただし、足趾については、長期的に可動域制限が残存することは少なくありません。
また、日常生活においては特に歩行に大きな影響を及ぼすこともあります。
足趾の可動域制限が生じやすいのは・・・、
「中足趾節関節(MP関節)屈曲・近位趾節間関節(PIP関節)伸展・遠位趾節間関節(DIP関節)伸展」です。
特に、荷重機能として、MP関節屈曲制限・DIP関節伸展制限の影響は非常に大きいことを知っておく必要があります。
歩行周期の立脚中期以降では前足部で体重を支えることになりますが、
MP関節屈曲制限・DIP関節伸展制限があることで、足趾の腹の部分に荷重をかけられなくなります。
そのため、フィードフォワードで足趾に体重をかけないようになってしまいます。
足趾に体重がかかりにくくなるわけですから、推進機能が発揮されなくなり、体幹を前方へ運ぶことができなくなります。
つまり、立脚終期(TSt)に体幹をより遠くに運ぶために、
MP関節、PIP関節、DIP関節の可動域制限がないことは非常に重要なんです。
いわゆる足趾の荷重機能が低下している患者は
ほとんどの例でMP関節屈曲制限・DIP関節伸展制限を有しています。
以上のことから、MP関節屈曲・DIP関節伸展の可動域制限について、
セラピストは常に注意深く観察しておく必要があるのです。
足趾の拘縮のメカニズムは下記の図を見ると、理解しやすいです。
例えば、MP関節を例に上げて考えてみましょう。
どの関節も関節包で包まれていて、その関節の動きに伴って関節包がつっぱらないように、図のような余りがあります。
例えば、MP関節では伸展時に関節包下方の余りがなくなり、上方では近位側に余りが増えます。
しかし、この関節包の余りの部分に滑走障害を生じると、屈曲が困難になり、伸展拘縮を伴うようになります。
このように、よく生じやすい関節の拘縮のメカニズムがわかってくると、我々の技術が決まってきます。
こうした知識の蓄積が、素晴らしいセラピストたちの技術の裏付けとなっています。
複雑に感じることも、
一つ一つ紐解いて単純化することで、我々がやるべきことが見えてきます。
皆さんもぜひ足部の拘縮にも着目してみてください。
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整形クリニックに来院する股関節疾患の患者の多くは、変形性股関節症やFAIによる症状がメインになります。
その症例の股関節痛や跛行の原因は、隣接関節からの影響も多く、身体全体を診て評価する事が重要です。
股関節周囲の触診技術、股関節解剖・運動学の知識と技術を習得はもちろん、歩行分析・動作分析から愁訴の改善のための原因を探求します。
整形外科疾患の疼痛や愁訴の改善には、単関節のみのアプローチでは改善できない事も多く、今回股関節からの介入を通じて隣接関節との関連を分析考察していく過程を学んでいきます。
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【松田現先生】臨床に多い肩関節痛に対するPNFの臨床応用~拘縮・夜間通・インピンジメントに着目して~
◆講 師:松田現先生
◆開催日:2025年9月27日(土)18:00 – 21:00
概要
人間の身体では中枢神経疾患でも、運動器疾患でも共通して短縮しやすい筋や働きにくくなる筋があります。目に見える部分の動きの感覚は鋭敏で、目の届かない部分の動きに対して鈍麻しやすいのも変わりません。
また、足底から下肢、骨盤帯、体幹を経由して上肢帯の動きがあるということを踏まえると全身の動きやアライメントを適切に評価できることが私達には求められます。
このセミナーでは単に肩関節に対してどのようなパターンを用いるのかというような方法論だけではなく、根本的に人間の身体というものを「感覚」という視点からどう捉えるのか、その感覚を変化させて症状を緩和の方向へ導くための道筋を紹介させていただきます。
どの肢位で行うのか、それは何故か。
PNFパターンを用いるのか、マット動作を用いるのか、歩行介入の中から行うのか、それは何故か。
どのPNFテクニックを組み合わせるのか、それは何故か。
どの症例にもそれぞれの病歴、病態、その人特有の身体的・感覚的特徴があります。それを踏まえて何を選択するのか、私達には大きな責任が伴います。
自身を持って肩関節疾患に対して対峙できるように、当日は様々な方法を提示させていただきます。
よろしくお願いいたします。
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【工藤慎太郎先生】1単位で診る!外来痛みシリーズ 運動器疾患の痛みの「なぜ?」がわかる~足関節 座学編~
◆講 師:工藤慎太郎先生
◆開催日:2025年10月04日 (土) 18:30 – 20:30
概要
関節の伸展制限で特に問題になる,半膜様筋の構造、腓腹筋内側頭と周辺構造の位置関係を詳細に理解して,その周囲の疎性結合組織に対する治療の重要性を理解してもらいます。
また伸展制限により悪化する関節周囲構造の機能的破綻とそれらに対する運動量を解説します。
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【小泉圭介先生】小泉先生が考えるコンディショニングトレーニング 下肢・体幹編
◆講 師:小泉圭介先生
◆開催日:2025年10月13日 (月・祝) 10:00 – 13:00
概要
概要
体幹の安定性という定義はスポーツ競技によって異なります。それぞれの動作によって求められる機能が異なるため、何が必要とされているかを見極める能力が求められます。いわゆる体幹の剛体としての固定力が必要なのか、それとも骨盤帯の回旋安定性が必要なのか、はたまた下肢と体幹の連動が必要なのかという点を整理して考えることが重要です。そして、どうやってNeutral zoneでの脊椎アライメントコントロールを学習し定着させるかがポイントになります。
今回の講習では、私が日頃行っているコンディショニングトレーニング小泉メソッドから、骨盤コントロールの評価とエクササイズのデモンストレーションをご紹介できればと思っています。
セミナー内容
・下肢と体幹の運動学を簡単に復習し、一般的に求められる機能と競技スポーツで求められるレベルの機能について再確認いただきます。
・競技者のコンディショニングで実施しているトレーニングについて、特に骨盤安定性の評価と下肢体幹連動エクササイズを例にご説明します。
・実際に小泉がどのようにエクササイズを行うか、デモンストレーションを通じてご紹介します。
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【吉尾雅春先生】股関節前面痛のインピンジメントを解剖学・神経学的視点から考察する~原因の特定とクリニカルリーズニングの重要性
◆講 師:吉尾雅春先生
◆開催日:2025年10月19日 (日) 9:00 – 12:00
概要
発症後数か月経過した脳卒中者のうち2割程度が股関節前面に痛みを持つ。しかし、その痛みがなぜ起きるのかという議論はあまりなされていない。必然的に当該部位へのアプローチは曖昧で、仕上げはなぜか「他動的なROM ex.」である。受傷後1年以内の脊髄損傷者では股関節前面に異所性骨化が散見され、手術適応になる。両者に共通していることは中枢神経障害に伴う運動麻痺である。改めて股関節の解剖学的特徴と股関節屈曲運動の構成を理解することが必要である。すると、運動麻痺者に限らず、脊柱をはじめとする体幹に問題を持つ人や健常者においてさえも股関節前面にインピンジメントを惹起する可能性が高いことに気づくことができる。
股関節の構造によるもの、疾病特有の運動障害に伴うもの、活動性の変化に影響を受ける時期的なもの、生活歴に関連するものなど、視野を広げて検討しなければならないが、本セミナーでは以下のことについて触れながら考えてみたい。
・脳卒中者や脊髄損傷者にみられる股関節前面の病態
・股関節および周辺の基本的な構造
・股関節屈曲運動の構成と問題
・股関節前面のインピンジメントの可視化
・運動障害に伴う股関節前面のインピンジメント
・生活歴と股関節前面のインピンジメント
・その他
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【松本正知先生】松本先生はこう考える!! 四辺形間隙(QLS)症候群、肩甲上神経絞扼障害、胸郭出口症候群に対する評価と運動療法
◆講 師:松本正知先生
◆開催日:2025年10月25日 (土) 17:30 – 20:30
概要
到達目標
① 四辺形間隙(QLS)、肩甲上神経周辺の肩甲骨、胸郭出口の解剖学的な特徴を理解する
② QLS症候群、肩甲上神経絞扼障害・症候群(SNES)、胸郭出口症候群(TOS)の概要を理解する
③ 上記3疾患に対する評価を理解する
④ 上記3疾患に対する運動療法の考え方を理解する
⑤ ①~④の理解を通し、セラピストが患者さんへ提供できる運動療法を再考する
QLS症候群、SNES、TOSは腕神経叢のそれぞれに関わる神経の絞扼性神経障害であり、共通の症状として肩の外側から後方の痛みや放散痛、筋力低下に伴う挙上動作の困難、感覚障害などが上げられます。これらの疾患に対する基本的な運動療法の考え方は、同じと思います。末梢神経へのアプローチだけでなく、その周辺のfascia、肩甲上腕関節や肩甲骨の機能の回復、全身的な(特に股関節より近位)柔軟性や筋力を改善する必要があります。ただそれだけでは、不足していると考えます。
本講義では、①~④を到達目標とし、⑤でその不足していると思われる運動療法を考えたいと思います。
応募はこちらから
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https://pro.ugoitalab.com/products/20251025z/
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※新型コロナウイルスの影響により、現在会場セミナーは中止しております。
Zoomセミナーは詳細が決まり次第、掲載していきます。
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