矢状面の関節モーメントを理解する鍵とは?

矢状面におけるスタティックな関節モーメントを理解する際、関節モーメントに特に影響を及ぼす2つの要因を把握することが重要です。
それは、下の図の「身体重心の移動」、「骨盤の並進運動」です。
身体重心の移動とは、アライメント変化の有無にかかわらず体重を身体全体の重量をを前後に移動させる状態を指します。
骨盤の並進運動とは、身体重心の位置変化にかかわらず骨盤のみを前後に動かす状態を示します。
これら2つの要素を理解することは、矢状面での関節モーメントを把握するために非常に重要です。

まず、身体重心の移動について考えてみましょう。
身体重心の影響をだけを考えるために、身体アライメントを変えずに体重を前方に移動させた状態が下の図です。
aの状態では、下部腰椎のより上の重量は前方に位置しますので、腰椎には伸展モーメントが作用し、背筋群が働きます。
またそれに付随して骨盤の前傾を伴います。
実際に、下腹部と腰背部に手を当てて体重を前方に移動させると、背筋が収縮しているのを感じることができるでしょう。
次に、股関節では前傾に伴って屈曲が生じ、伸展モーメントが作用し、殿筋群が活動します。
膝関節は伸展し、屈曲モーメントが、足関節は背屈し、底屈モーメントが作用します。
一方、身体重心を後方に移動させると、関節モーメントと関節の動きはすべてaの状態と反対になります(下図b)。
すなわち、bの状態では、腰椎には屈曲モーメントが作用し、腹筋群が働きます。
またそれに付随して骨盤の後傾を伴います。
実際に、下腹部と腰背部に手を当てて体重を後方に移動させると、腹筋が収縮しているのを感じます。
また、股関節では後傾に伴って伸展が生じ屈曲モーメントが作用し、膝関節は屈曲し伸展モーメントが、足関節は底屈し背屈モーメントが作用します。

次に、骨盤の並進運動の影響を考えてみましょう。
骨盤の並進運動の影響をだけを考えるために、身体重心の位置を変えずに※、骨盤だけを前方に並進させた場合、骨盤は後傾します(図3-53a)。
aの状態では、下部腰椎のより上の重量は前方に位置しますので、腰椎は屈曲モーメントが作用し、腹筋群が働きます。
股関節では骨盤後傾に伴い、伸展が生じるため屈曲モーメントが作用し、股関節屈筋群が活動します。
膝関節では屈曲が生じ、伸展モーメントが作用し、大腿四頭筋が活動します。
ただし足関節では背屈が起こりますが、身体重心の位置が変わらないため、底屈モーメントと背屈モーメントは変わりません。
これは筋肉が働いていないということではなく、自然立位時と変わらないという意味です。
一方、骨盤を後方に並進させた場合には、関節モーメントと関節の動きはすべてaの状態の反対になります(下図b)。
すなわち、bの状態では、腰椎は伸展モーメントが作用し、背筋群が働きます。
股関節では骨盤前傾に伴い、屈曲が生じるため伸展モーメントが作用し、股関節伸筋群が活動します。膝関節では伸展が生じ、屈曲モーメントが作用し、ハムストリングスが活動します。
ただし足関節では底屈が起こりますが、身体重心の位置が変わらないため、底屈モーメントと背屈モーメントは変わりません。
この場合も筋肉が働いていないということではなく、自然立位時と変わらないという意味です。

ここまでの内容を踏まえると、身体重心を前方に移動させた場合と、骨盤を前方に並進させた場合では、関節モーメントも、関節の動きも、実は多くは反対になっているのがわかります。
これは、身体重心を後方に移動させた場合と、骨盤を後方に並進させた場合でも同様です。
私たちの臨床では、身体重心前方位と骨盤前方位を分けて考えているセラピストは、それほど多くないと思います。
しかし、似たように見えるこの2つの前方位では、腰椎、股関節、膝関節、足関節、全ての関節で、モーメントと動きが概ね反対になっているのです。

つまり、身体重心と骨盤の位置を正しく理解しなければ、関節モーメントを正確に把握することができません。
こうしたことがわかってくると、さらに臨床は面白くなってきますよ。
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